本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
アサガオの苗を鉢に移す。
三十センチくらいの棒を差し、その先端に、麻紐を結わえ付けた。
その麻紐は、二階の仕事部屋の窓上まで届いている。
アサガオが成長すれば、
門前から、蔦が伸びてきて、屋根近くまで、花が咲き誇る。そんな、みやびやかな景観が出来るって寸法だ。うまくいけば、な。
成功したら、写真をアップするので。楽しみに、な。
なんで、こんなこと思いついたかと言えば、町内の或る家の影響。
勝手に俺はアサガオ屋敷と呼んでいる。
とても屋敷とはいえない、山小屋に塀を巡らせたくらいの小さな家。
人が住んでるかどうか解らない。
ちょっと、流行のゴミ屋敷ふう。
しかし、そこに溢れているのは、ゴミではない。
数多の植物の群れである。
家全体が蔦に覆われている。さながら、植物のトロール網に包まれたかのよう。
そして、夏場は、屋根のテレビアンテナまで、
アサガオの蔦がぐーんと伸び、花を咲かせているのだ。
何だか、植物形態のエイリアンがこの家だけ支配し、
ささやかな地球征服に成功したかのように見える。
で、そのボスがアサガオって感じ。
きっと、家の中では、住人が植物に寄生され、畳に根付いているのだろう。
動けないまま、口や耳や鼻の穴から、アサガオの花を咲かせているに違いない。
おおっ、カッコいいじゃないかっ。
それで、よしっ、俺も、アサガオにささやかな地球制服をさせようと、しなやかに決意したのであった。
そろそろ、来年の仕事の打ち合わせが三つ四つとたてこみそうなスケジュール。
その前に、今年の仕事をきちんとゴールさせねば。
しかし、「夕陽はかえる」初稿を渡して以来、早川書房から連絡が来んなぁ。
仕上げる前は、あれだけ催促してきたのに。
おそらく、原稿を読んだ編集が、あまりのことに発狂したのだろう。
解るよ。俺だって、書きながら発狂しそうになったもの。
で、いつもなら、第二稿でわたすのだけど、発狂するのが怖いので、爆弾ゲームみたいに、編集に初稿を渡してしまったのさ、あはははは。
さあ、次は読者の方々だ。
あした、狂ってくれるかなー、みんなで広げよう、発狂の輪!
晩飯。ジャコと野菜のチャーハン。厚揚げ焼き(三杯酢と刻みネギ)。小松菜のお浸し。
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