本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
「続・S教諭」
小学四年生の時のクラスの担任、S教諭が女子生徒への猥褻行為で懲戒免職処分にされた事件。
その話の追補。
思い当たる伏線が事件の一年前にあったのだ。
俺は、(今じゃ誰も信じないだろうけど)、小学一年生から二年生の全学期、体育の成績だけは「5」(もちろん5段階評価で)をもらっていた。
五十メートル走、走り幅跳び・高飛び、といった直線軌道の単純な運動は得意だったわけである(後に、球技など、複雑化したものが授業に組み込まれるにつれ、成績は下降していった)。
三年生の時から、S教諭がクラスの担任となった。
すると、体育の評価は、五十メートル走や走り幅跳びなどの競技の記録は基準にしないと言い放った。
じゃあ、何を評価基準にするかというと、
それは、「ラジオ体操」。
ラジオ体操をどれくらいキレイに出来るかどうかで成績を決定するというのだ。
で、一学期末、俺らは体育館の舞台に数人ずつ横並びにさせられ、ラジオ体操・第1をおこなった。
下からS教諭がノートに何やら記しながら、こちらを見上げ、チェックしている。
そして、女子生徒の番になり、同じく、舞台上でラジオ体操・第1。全身を伸ばしたり、曲げたり、逸らしたり。
それを食い入るように見上げるS教諭の血走った目が確かにあった。
こうした経緯の後、俺の通信簿に記された体育の成績は・・・「2」!!
自慢じゃないが、いや自慢だが、繰り返すけど、それまで、一年、二年と通して、ずーっと「5」だったのに、いきなり「2」なんて、そんなことありえねえーよっ!
親も引っ繰り返っていたよ、いったい、何があったのかって。
俺の健康状態まで心配したろう。
あの時のラジオ体操の審査は、一年後の事件の予兆だったのだ。
これこそ、まさに、プレイの前の準備体操みたいなものだったというわけである。
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