本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
「きらきらラーメン」
赤羽の若者にとって、脂っこいラーメンといえば、
常盤台にある「土佐っ子ラーメン」、通称・環七ラーメンがまず思い浮かぶ。
深夜、よく、車でわざわざ行ったものだ。
とにかく、凄い迫力の脂がスープ表面を覆う。
立ち食いの店で、気をつけないと、床に散った脂でずるっと滑るほどだ、ホント。
当HPの常連・タツローは、ある時、酔った勢いで、友人の車に乗り、食いに行った。
アルコールでバカになった胃に、するすると濃厚なラーメンは収まる。
さらに、タツローは頭もアルコールに犯されていたらしい。
なんと、自分へのお土産のラーメンをオーダー。
丼の熱々のやつをそのまま自宅へと持ち帰ったのだ。
で、酔っていたので、寝てしまう。一口も箸をつけないまま。
翌朝、丼を見て、己の愚考を知る。
丼の中身は、すっかり脂がゾルゲル状に固まり、さながら、固めるテンプルのようであったという。
もちろん、食えたものではなかったとさ。
と、昨日、上記のような報告書を掲載したところ。
当HPのレギュラー陣より、熱っぽい反響メッセージをもらう。
タツロー氏と、ますふじ圭氏、の二人。
両名とも俺と同じく赤羽育ちだものな。やはり、即、反応。
そして、「土佐っ子ラーメン」の実に強烈なインパクトを改めて認識したのであった。
タツローが酔った勢いで、自分へのお土産ラーメンを買って、箸をつけずにそのまま眠りこけ、翌朝まで放置していた暴挙は、昨日、記した通り。
しかし、俺の記述にミスがあった。
タツローが、正確なレポートを寄稿してくれたので、それを一部、転載させていただく。
以下の通り。
土佐っ子ラーメン、無性に食べたくなったぞ![報告書]よんだら。
でっ、情報修正依頼。次の通り。
鍋を持って行き、油ギトギトのつゆと、ゆでてない麺を買って帰ったことは事実。
だけど、
翌朝、鍋のふたを開けた時、そこに見たものがちょっと違うんだなあ。
鍋のふたをあけると、きれーな完全な透明な液体がそこにはあったんだよ。
底に少しだけ油粕みたいな背油の塊があるんだ。
でも、油はそれだけでない。
透明な液体部分も、油。
90%以上が完全に透明な油なんだ。
コンロにかけて、かき混ぜると、あのスープになる。
ここのラーメンを食べた翌日は必ず下痢してたもんなあ。
ほとんど油飲んでれば腹こわすよね。
タツロー、修正レポート、ありがとう。
それにしても、90%が油だったとは!
でも、あれが病みつきになって、唐突に無性に食いたくなって、気が付くと車に乗ってるんだよな。
麻薬みたいなものだった。
「このスープ全部飲まないと、数日後、後悔するよ」
って、タツローが教えてくれたのを、覚えている、
そうだ、あの時、俺は、まだ、土佐っ子DT(童貞)だったのだ。
タツローこそが俺を「お腹殺油地獄(おなかごろしあぶらのじごく)」へと引きずり込んだ犯人だった、今、思い出したぞ!
続いて、ますふじ圭くんからの寄稿。
「土佐っ子ラーメン」の思い出。次の通り。
おいらの友人の佐々岡(仮名)くん、奴と「土佐っ子ラーメン」に行った。
酔っても酔わなくても、足元が覚束ない佐々岡くんは、丼を受け取って歩き出した瞬間に、油床に滑って大転倒!
いつも革張りの靴底の高級紳士靴を履いていたのも原因。
撒き散らした麺が散乱、ツユで床は更にテカテカ!
作り直してくれた2杯目!
それを両手に受けて、そこで食べようと体をずらした、
その瞬間、またまた、ずるっとすべって、
丼は宙を舞い、中身はカシミアのコートに・・・。
そして、脇に居た眉毛を剃ったお兄さんの顔に・・・。
おいら、なぐりかかるお兄さんを制して、ギトギトの佐々岡くんをひっつかんで、
当時の愛車スカイラインGT-EXターボの後部座席に投げ入れ、フルアクセルで逃げ帰ってきました。
因みに、数日後、おいら謝りに行きました。
確か、当時の店長さんだったと思うが、
「あんな漫画みたいな光景は、この仕事初めて、最高の出来事でした」
と感動を伴い大笑いしてくれました。
そして、これまた、因みに・・・。
佐々岡くん、そのギトギトになった靴を数週間封印していたのだが、
ある日、すっかり忘れて(つまり底に油を塗ったまま)
大学のカフェテリアでスパゲティを頼み、自席まで運ぶ途中で滑って、
後方にトレイごと巴投げしてしまい、女子大学生の全身をミートソース化してしまった。
これも漫画みたいな出来事だけど、ホントのホント。
まあ、総括して考えてみると、「土佐っ子」の油床よりも、酔っても酔わなくても足元の覚束ない佐々岡くんに原因があるのかもしれんなぁ。
ますふじくん、ありがとう。
俺も土佐っ子で立ち食いしながら、視界が少しずつ変化していった体験があるよ。
油床で滑りながら、食ってたんだな。
それにしても、足元の覚束ない佐々岡くん、老後が心配だ。
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