本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
「アカバネは聖地」
団地出身の俺としては買わずにいられない本に遭遇した。
それは、
「僕たちの大好きな団地」(洋泉社MOOK/1260円)
というB5サイズの写真いっぱいのムック本。
団地マニア、という一族がいるらしい。知らなかったよ。
団地について研究し、その観賞の仕方とか、まるで茶道のようなワビサビの世界を築いているという。
独特の用語も生まれている。
たとえば、建物の壁面に突起した部分を「オデキ」、三角形の建物をスターハウスとか。
そうそう、俺の住んでいた赤羽台団地にもちゃんとスターハウスがあったよ。三角団地と呼んでたけどね。
解説によれば、スターハウスは団地のシンボルタワー的存在で、外部からもっとも見えやすい位置に置かれるらしい。なるほど、確かに、赤羽でも坂下からすぐ見えていたよ。
この本、何が何でも欲しくて買ってしまったのは、巻頭いきなり、わが懐かしの赤羽台団地の特集が組まれているから。
タイトルが泣かせる。
「聖地・赤羽台団地を訪ね歩く」
さらに、本文によれば、「・・・赤羽台団地は、団地愛好家にとって聖地とも呼ばれている場所・・・」
もう、伊勢神宮や出雲大社のごとき扱い方だ。
写真には見覚えのある光景がいろいろと、ああ、目頭が熱くなるぜ。
そして、俺の住んでいた22号棟のアップも!
焼却炉の付随した貴重な物件、として価値が高いとキャプションに記されている。
そうだったのか。まったく、そんな凄いところとは露とも知らんかった。
あの、焼却炉、ガキの頃のいい遊び場だったんだよな。
炎が逆巻いている炉の中にいろんなもんを放り込んで燃やした。
スプレー缶なんか、爆発して、炉の蓋がバーンって吹っ飛びそうになったり。
今じゃ、大問題になる遊び場だな。確か、俺が小四くらいの時には、炉の火は永遠に消されていた。
団地マニアの座談会のページも楽しい。
それによれば、マニアの勝ち組とは、マニア熱が高じて、ついに、団地に住むようになった者、だそうだ。
座談会の一人がそうだった。自慢していた。
ならば、聖地・赤羽台の貴重な22号棟に30年近くも住んでいた俺って、
マニアから見れば、団地の巨匠、ミスター団地、団地王、そんな眩しい存在なのかもしれん?
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