本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
近所のライブハウス。貼紙によれば、
近々、安西マリアが出演するらしい。
♪ギーラギーラ太陽が燃えるようにー、って、
ホントにここ数日、猛暑なので、少し腹が立った。
しかし、懐かしい。なぜか芸能人水泳大会を思い出す人は俺だけではあるまい。
当日は、どんな客層なのだろうか。ちょいと気になるのであった。
俺の生まれ故郷である岡山の片田舎に、野口五郎が来たことがある。
中学校の体育館でコンサートを行うためだ。
八十年代だったので、既に人気のピークは過ぎている。
それでも、滅多に芸能人などやってくる土地ではないので、住人たちはそわそわしていた。
かといって、あからさまに浮かれるのも恥ずかしいと考えてるのだろう、自制心と興奮とがせめぎあっている様子。
しかし、もう朝から、誰もがコンサートの話題に触れてくる。
「あんたー、行くんかー、わたし、どうしようかー」
「なあ、野口五郎じゃなー、ちょっとなー」
「**さんとこは、家族で行くらしいで」
「なら、あんた、近所ならー、一緒に行かれー」
「けど、野口五郎、あんまし好かーないしー」
なんやかんや言って、興味に激しくまみれてる、絶対に行ったと思う。
かように、朝からテンションが上がり調子の住人たちは野口五郎の話題一色。
なんだか、バイブでも仕込まれたみたいに、町中が微妙に波打っている。
そうした普段と異なる空気を察して、犬たちは不安に駆られたらしく興奮して吠えていた。
町内の至る所から犬のけたたましい鳴き声や遠吠えが響いてくるのだった。
ああ、さすが野口五郎だ、と妙に感心したものである。
やはり、安西マリアが来る日も、
朝から町内は犬が騒ぎ出すのだろうか?
番犬ハチ君は遠吠えを上げるのだろうか?
晩飯。最近、家内の得意のカシミール野菜カレー。辛いが美味い。オクラとキューリとワカメの酢の物。
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