なるほど、と思わず膝を打った名言の中で、
誰が言ったか忘れたけれど、
「お風呂に入った後に、うんこすると、損した気分になる」
というのがある。

　本日の俺がそれに似たことの連続だった。
朝、天気予報で、昼には気温が三十六度になるかもしれんことを知ると、
キャンプ用の日除けシートを買ってあったのを思い出して、
物置をひっくり返して、ようやく発掘した。
それを庭のホロの上にロープで結わえるなどしてセッティング。
もちろん、番犬ハチ君の猛暑対策のためであるよ。
この作業で、朝っぱらから、ずくずくの汗だく。
つい、さっき散歩から帰り、シャワーを浴びて着替えたばかりなのにさ。

ついで、夜、風呂から上り、バスタオルで拭いていたら、
壁をかさかさとゴキブリが這っているよ。
うちは滅多に出ないのに、きっと、外から紛れ込んできたのだな。
よりによって、風呂上がりでサッパリきれいにしているタイミングで。
やむをえん、と思うまもなく、
俺は平手を飛ばして、ゴキブリを潰していた。
条件反射である。
赤羽の団地に住んでいた頃に、さんざんゴキブリとの抗争に明け暮れた、その時の性癖であった。
石鹸で手を洗い、壁を掃除し、死骸をトイレに流す。
せっかく風呂に入ったのに、意味のない空しいひと時であった。

　朝八時から夜九時ごろまで、ぶっ通しで、新作「夕陽はかえる」の改稿作業を続ける。
さながら峠越えである。頂上は無事、通過したようだ。あともう一息。

　家内が野菜カシミールカレーをこしらえる。極辛の旨みが疲労に心地いい。
キューリとワカメの酢の物。トマトのサラダ。