本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
ひゃーっ、驚いたよ!
というのも、
昼下がり、買い物を終えて、俺が自転車で走っていたら、
ふと、横を見ると、
電柱が飛んでいる! ミサイルみたいに横になって。
コンクリートの電柱が、すぐ横を飛んでいるんだ。
ホント、驚いたよ!
一瞬、白昼夢を見ているのかと思った。
まもなく、電柱は俺の自転車を追い越して行ってしまう。
で、カラクリが解ってホッとする。
トラックが電柱を運搬していたんだ。
それはそれで、二重の驚きだった。
電柱を丸々一本、横にして、乗っけて、トラックが走っているんだ。
初めて知ったよ、電柱の運び方。
こんなにストレートかつシンプルな方法で運搬していたとはっ。
しかし、このトラック、絶対にカーブできないと思う。
つまり、ずーっと真っ直ぐに走ってきたんだ。
逆に考えると、電柱を設置する場所が決まると、そこから直線方向の広い場所で電柱は製作されるということになるわけか?
俺を追い抜いたトラックは、自宅近くに止まっていた。
そこが、電柱を設置する場所だった。
いったい、これから先、どういうふうに電柱が立てられるのだろう?
激しく興味を刺激された俺は、炎天下、しばらく作業を見学させてもらう。
まるで、下世話なNASAの風景だった。
トラックに発射台みたいな機械が装備されていて、それが稼動すると、
電柱がしだいに角度を広げて、立ち上がってゆく。
垂直になったところで、発射台は横移動する。カッコいい。
そして、定位置に来ると、ゆっくりと電柱はエレベーターのように降下し、
道路の穴の中へと吸い込まれてゆく。
おおっ、こうやって、電柱は立てられるか!
俺は猛烈な感動に包まれて、カキ氷のカップを買って帰宅したのであった。
日射病の危機に身をさらしての、命がけの社会科見学であったとよ。
これが空飛ぶ電柱だ!
あ、そうそう、朝、ハチ君の散歩してたら、
ダックスフンドを連れてる顔見知りのオジサンが教えてくれたんだ。
明け方、善福寺池のほとりで首吊り自殺があった、って。
ここ三十年で、九件目らしい。
もう既に、警察の調べは終わり、形跡はまったくない。
どの木だったのだろうと、思いつつ、池を回る。
ハチ君が、木にマーキングしてるよ、ん、そこなの?
晩飯。活きのいいイワシを三本買ってきて、食べる直前で刺身におろした。酢飯を茶碗に盛り、その上に、イワシ刺身を載せ、ミョウガ、シソ、万能ネギなどのみじん切り、海苔を添えて、小ぶりな丼、何べんもお代わりする。
ジャガとソーセージの薄切りでジャーマンポテト。
冷やしトマトにオリーブオイルのソースでイタリーサラダ。
以上、日本、ドイツ、イタリア、敗戦三国同盟でメニューをまとめ、いろいろと思いを馳せる夏の日。
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