本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
■ 9月23日(日)・2007
September 23, 2007 1:54 PM
残暑もそろそろ断末魔らしい。
時折、吹く風が秋の涼しさを含んでいる。
食欲が猛然と増し、昼飯に、蕎麦屋に飛び込み、かき揚げ丼を食らう。
日頃、中性脂肪に気を付けて揚げ物を控えていることもあり、美味かったことよ。
これで生きてゆける(何もそこまでっ)。
不定期刊の同人誌「畸人研究」の最新号を拾い読みする。
実在する奇人さんたちをレポートした専門雑誌である。
今回、ぐっとくるクリーミィーなエピソードが掲載されていて、かなりの感銘を受けた。
中野あたりではかなり有名な話であるらしい。
なので、折角だし、簡単に内容を紹介させていただこう。
深夜の公園のベンチで奇妙な男がよく目撃されていた。
黒い学生服に、頭には大きなサイコロをかぶった異様な格好。
じっと座り込んで、両手をサイコロの耳の辺りに当て、時折、首を左右に振るらしい。
ある日、その公園の近くの大学の学生寮で死体が発見された。
男子生徒が自室で首吊り自殺をはかったのである。
その部屋の押入れには大きな段ボール製のサイコロがあった。
サイコロの内側には、たくさんの鈴がぶら下げられている。
また、上部の豆電球が電池で点灯される仕組みにもなっている。
そして、かぶった際、目の前にくる辺りには、可愛らしい女性の写真が何枚も貼られていた。
同じ大学の女生徒で、男は想いを寄せていたらしい。
悲恋に終わったのだろう。
深夜、男はサイコロの中で、美しい鈴の音に耳を傾けながら、彼女の顔を見つめ、甘美な夢の世界に浸っていたのである。
晩飯。シチューを食べて、ますます秋は深まる。キューリの胡麻油和え、冷奴、少し夏の名残。
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