本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
夜7時、神田の町を行く。
駅前に客引きのバドガールや、早くも酔客が騒いでいて、ああ、羨ましい。
金曜の夜なんだな。
何度もバドガールを振り返りつつ、立ち並ぶ居酒屋の明かりの誘惑を振り切り、
目的の場所に。
早川書房の地下一階のレストラン。
「ミステリマガジン」巻頭の恒例「ミステリアス・ジャム・セッション」のために、
評論家・村上貴史さんのインタビューを受けるのである。
ちょうど、新作「夕陽はかえる」の見本が出来上がり、編集・マイキーKさんが嬉々として持ってきてくれた。
おお、夕焼けの表紙が輝いているぜ。
本文と関係ないところでも、早川ならではの悪戯が仕込まれていて、すこぶる嬉しい。
感無量である。関係者の皆様、本当にご苦労様でした、深く御礼申し上げます。
ビールでいろいろと乾杯し、食事をしながら、慶応推理研究会とワセダミステリの共通点や違いなど話題に、幾度も爆笑。
そう、村上貴史さんとマイキーさんは慶応推理研、俺はワセミスなのである。
かつてのミステリ連合大会の事件についてもいろいろと話が及ぶ。
食後、インタビュー開始。
村上さん、資料としてたくさんの拙書と書き込みをしたゲラを携え、大荷物であった。恐縮です。
そして、さまざまなアングルから質問を飛ばしてくる。
鋭いところを突かれ、幾度もハッとした。
幼少時代の俺の遊びや、読書の目覚め、ミステリ遍歴、投稿時代、趣味や嗜好など、
あらゆる方面から分析が施されてゆく。
それを冷静に続ける村上さんは、さながら、FBIの心理分析官のようであったよ。
俺が、時計の歯車や機関車のシャフトに官能を覚える「構造部品フェチ」であることも判明。なんだか、次々と丸裸にされていくようで、恥ずかしさと快感を覚えた。
取調べ、いや、インタビューは二時間に及ぶ。
改めて自分の正体を知り、行くべき道が見えたような気がした。
村上貴史さん、ありがとうございました。心より御礼申し上げます。
早川書房ビルを出て、近くの居酒屋でかるく打ち上げ。
なぜか、友成純一先生や、リチャード・ニーリィの新作の話題で盛り上がる。
十二時過ぎに解散。
神田駅前で立ち止まり、よく見回したけど、バドガールの姿はなかった。
ちゃんと電車で帰り、西荻で軽くまた一杯。充実の夜であったとさ。
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