本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
というわけで、酔死体の状態であったため、
ほぼ一日、安静にしておった。
何気なく、テレビをつけてみる。
格闘技イベント「ハッスル・マニア」なんぞをオンエアしていた。
もちろん、こういうのは、テレビ東京。
ぼんやりと眺めていたが、つい引き込まれて、最後まで観てしまった。
スポーツ新聞などで、怪しげな格闘技だな、とは思っていたが、
初めて目の当たりにして仰天したよ。
どう表現すればいいのだろう、プロレス劇画をコント・ライブに仕立てたって感じかな。
でも、プロの格闘家が演じているし、タレント選手(出演者?)はちゃんと身体を鍛えているので、スピードもパワーも、迫力はさすが。
それにしても、筋書やら、キャラ造形やら、演出がとんでもなくハイパーなのだ。
元横綱という過去の栄光はいずこ、あの曙は、ボノちゃんと呼ばれ、大きな赤ん坊という設定。
母親役のインリン・オブ・ジョイトイも一緒に参戦。ムチをふるってバトルを繰り広げる。
ボノちゃんは負けそうになると、ママ・インリンに泣きついたり。
で、敗北してしまったボノちゃんは、やおら、リング上でマイクを取ると、敵に向かって叫ぶ、
「やい、てめえーら! パパに言いつけてやるからな!」
他にも、
レイザーラモンHGがボブ・サップに股間をグリグリ押し付けて、失神寸前に追い込んだり、
ケロロ軍曹(もちろん着ぐるみ)が空中殺法を披露したり、
大食いチャンピオンのジャイアント白田が参戦を表明(大食いが何か技になるというのか!?)、
凶器を持ち込み可のタッグマッチには、巨大なパチスロ(?)が出現し、ボタンを押すと、スペシャル凶器が明示されて、それを入手できるって、もう無茶苦茶なルール、
と、まあ、肉体をガチンコ酷使する格闘技系のバラエティの様相である。
極めつけはやはりメインイベント。
高田総統の(演じる)化身は、エスペランサーといい、サイボーグかターミネーターみたいな無気味な動作で闘う。
冷たく妖しい空気を漂わせ、その異様な姿に、中継アナたちも、
「まったく非情かつ冷血なそのたたずまい、呼吸の気配すら感じさせません」
「いや、呼吸をしてませんよっ!」
真剣な口調で語り合い、ちゃんと盛り上げてくれるのだ。
そして、このエスペランサーの最大の技というのが、
指先から発射されるレーザー光線!
もはや、格闘技でもなんでもないし、人間じゃないですよっ。
で、ついに、レーザー光線が発射、しかし、対戦相手の坂田亘がかろうじてよける。
すると、光線は、観客席後方のテレビカメラマンに当たり、
カメラマンはウアッと苦悶の悲鳴を上げると、五メートルくらいの高さから落下・・・。
中継アナ「ああ、犠牲者がまた一人」「残された奥さんや子供のことを思うと・・・」「労災は利くのでしょうか」「それを願うばかりですね」「ええ」
エスペランサー、二発目のレーザー光線を発射しようとした、
その時、
「ちょっと、待ちなさい! 撃つならば、私を撃ちなさい!」
と、客席通路から女性の必死の叫び。
白い衣装をまとった美女、妖精(と呼ばれている)の登場だ。
(正体は小池栄子。つまり、リング上で危機に瀕している坂田の妻、新婚)
エスペランサー、容赦なく、レーザーを発射。
すると、妖精さんは鏡らしきもの(LOVEと記されている)で受け止めた。
撥ね返ったレーザーはエスペランサーを直撃、
破裂音と共に、その身体から火花が飛び散る。そして、ゆっくりとマットに沈んでゆくのだった・・・。
いやはや、一時間十五分くらい、もう驚き、笑いっぱなし、
いつのまに酔死体も回復してゆくのだった・・・。
晩飯。ホワイトシチューが全身に染み渡ったぜ。キャベツのサラダ。
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