本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
ドアのチャイムが鳴ったので、
二階の窓から顔を出して、声をかける(←たいてい、いつも、こういう対応)。
宅急便屋さんがいて、
「お宅、チョウさんでしょうか?」
えっ、俺はミスター長嶋でも、いかりや長介でもない。
ペンネームでも本名でも、チョウさんと呼ばれたことはない。
どうやったって、そう読めないし字面だし。
「違いますけど」
「住所はここの番地が書かれてるものでして」
「チョウって、どういう字ですか?」
張なのか、長なのか、と問うた。
すると、
「英語で、です」
ますます、わかんねえよ。
CHOUなんて単語はないし。
CHOWだと、正確な発音はチャウで、中国の犬、そう、チャウチャウ。
俺の顔がチャウチャウに見えるか? ならば、正直に言ってくれ。
また、うちの番犬ハチ君は、日本犬だし。吠えてる声が、ちゃうちゃうと聞こえるよ。
結局、わかんないまま、宅急便屋さんは首をひねりながら去っていった。
この謎、どうなったか、気になる。
驚いたね、あのニュース。
千葉県の、スナックで、女性店員がお客さんにインフルエンザの注射を打っていた。
この女性、昼間は病院の看護師を務める五十六歳のオバサン。
勝手に、インフルエンザ・ワクチンを持ち出し、
夜、親切心(?)から、客にサービス(?)していたというわけ。
「スナックのママが客に注射を打っている」
と、驚いた目撃者が警察に通報し、逮捕に至った。
俺が、何よりも驚いたのは、この事件を予言していた男がいたことだ。
その男とは、
天災的天才のホラー作家・飯野文彦氏である。
かれこれ、二十年も前に、
飯野氏は宴会芸で、
「お注射オバサン」というネタを演じていた。
ただのオバサンが、道行く人に声をかけて、注射を打つ、
それも、歌って踊りながら。
♪お注射、お注射、お注射しましょ、
お礼はいいの、
あ、いいの、いいの、いいの・・・
といった具合にミュージカル仕立ての芸であった。
違法の注射といい、親切なキャラといい、
まさに、現実のお注射オバサンは、この歌詞の予言どおりではないか!
恐るべし、飯野文彦! ホラー界のノストラダムス!
晩飯。餃子。ニンジンのサラダ。
ほんと、どうして、餃子にビールってこんなに合うんだろ。美味くて食いすぎた。
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