本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
レイトショーを観に、シネアートン下北沢へ。(この劇場、たたずまいといいい、場所といい、風情があっていいなぁ)
お目当ての映画は、
「STRAIGHT TO HEAVEN~天国へまっしぐら~」(監督・柏原寛司)
世辞抜き素直な感想、あっという間の84分であった。
敢えて余分な情緒を排して、クライムアクションに徹したコンセプト、この作り手たちの確信犯的な潔さが疾走感を生む。
心地よい。
タイトルは、アレックス・コックスの「ストレート・トゥ・ヘル」への目配りがあるのだろうが、内容は、より非情だ。
ヘルよりもヘブンの方が地獄という皮肉、既に仕掛けてきているね。
照れ笑いのふてぶてしさが、こちらの気分をくすぐってくれる。
監督の映画の嗜好のタイプから、
ドン・シーゲルやジョン・ウーなどのタッチを予測していたが(部分的にはシーゲル「突破口!」に近いが)、
何というか、アメリカや香港でもなく、意外や、フランスのノワールを髣髴させられた。
ただし、ジャン・ピエール・メルヴィルのような暗鬱なものでは決してない。
あれだ、
ロベール・アンリコの「オー!」。
ジャン・ポール・ベルモンドの、すっとぼけていながら、小粋なアクティビティ、
あのセンスを髣髴させるのだった。
シーンの数々にそうした世界感がにじんでいる。
イエローのカマロを中心とした原色や、舗道や壁などのストライプを、
効果的に多用し、
ヤバい悪夢を、ユーモアを交えて現出させている。
また、酸素吸入器(?)を手放さないヤクザ幹部、雨合羽の殺し屋など、イカれたキャラ
もこの悪夢の底から哄笑しているようで、ゾッと嬉しい。
おそらく、監督は、「オー!」を意識していないのだろうが、
生来の資質がこうした演出と表現を生んだのだと推察する。
ダークなテーマを明るく撮る、
この監督ならではの魅力的な持ち味である。
また、脚本(野坂直代・いさみたかお・柏原寛司)に散りばめられた、
遊び心のあるセリフが、この世界観を加速させる。
カラオケボックスの廃墟に逃げ込み、命を狙われているのに、
「おっ、歌本があるよ」
なんてところは、いいなぁ。
長崎チャンポン屋の女店員に
「盗みに入るなら、閉店後にしたら。開店前にじゃ、金あるわけないでしょ」
と叱られたり。
ラスト近くで、尻をさすりながら、「なんか変な感じなんだ」と半ベソのシーンは、
ここではうまく説明できない、観て、笑ってほしい。
そして、全編に流れる「ズロース・ブラザース」!?の歌が、
ひたすら可笑しくて、カッチョええ!
こういう、ドライで飄然とした疾走感あふれる映画を観ると、
やたらとビールが飲みたくなる。
なので、終映の後、アルコールを求めて、
酒場へまっしぐら。
例によって、西荻「戎」北口店で一杯。
くーっ、美味い!
STRAIGHT TO HEAVEN!
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