本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
土曜に岡山へ行き、叔父貴の通夜・葬儀に参列し、
日曜の夜、帰京、わりと強行軍なり。
いやはや、岡山は暑かった。
ちょっと歩いただけで、ズクズクの汗みどろ。
いずれの式も町内のセレモニーホールで行われた。
いわゆる多目的ホールで、
時に、舞踊の発表会、時に、カラオケ大会など催される、
その舞台上に、棺が置かれ、叔父貴は永眠していた。
俺を含め身内の者、数名が、この舞台脇の控え室で通夜を過ごす。
線香の火を絶やさないように、起きていなければならないのがセオリー。
しかし、最近、蚊取り線香のような渦巻き型の線香が用いられるようになり、
これ、発明した人、初めて導入した人、すごい!と思った。
六時間はかるーくもつのだ。
お陰で、ある程度の睡眠はとれて、
翌日の猛暑の葬儀を無事、乗り切ることが出来た。
死んだ叔父貴は、駅前の小さな小さな旅館を営み、
しかも、夫婦二人で、料理もこしらえていた。
どれだけ、小さな旅館か想像できよう。
けど、料理の味は抜群で、お客さんは常連ばかりだったようだ。
この季節、俺も、鮎とアナゴを食べさせてもらったものである。
俺が料理好きになったのは、ここのおかげだと思っている。
えっ、ああ、昨日も記した、
その叔父貴が義足だった件ね。
少年時代、叔父貴はかなりのやっんちゃだったようで、
映画「けんかけれじい」(監督・鈴木清順)よろしく、
集団で喧嘩をやらかしたことがあったらしい。
しかも、相手は大人たち(たしか、国鉄の線路工事関係の猛者連)で、
当然、大合戦の末、どちらも、みんな、大なり小なり、負傷をおった。
で、叔父貴は片足に怪我をしたけど、やんちゃな性格のため、
もう翌日から、川で泳いでいて、
そのため、運悪く傷口が化膿した結果、切らねばならなくなった。
以後、70年もの間、
義足で生活してきたわけである。
旅館の台所で、カシャンカシャンと足を鳴らし、
タンタンタンタンと包丁をさばいていた後ろ姿と音が忘れられない。
さて、火葬場に赴き、骨あげの段となった。
ふと、
地面を見たら、綺麗なコオロギがじっとしている。
目を凝らすと、
そのコオロギ、片足が無かった。
そういうことってあるのだなと思った。
合掌。
南無
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