本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
ちょいと買い物の用事あって、
吉祥寺「ユザワヤ」を訪れる。
ついでに、以前から気になっていた、4階の
「舞台衣装」売り場を見学した。
そのフロアだけ、ひときわ人工的な華やかさ。
スパンコール、ラメ、チュール、ジョーゼット、極彩色の模造毛皮etc
スウィートに毒々しくて眩い。
なぜか、妙な懐かしさを覚えた。
ああ、あれだ。
若い頃のメモリー。
「日劇ミュージックホール」の舞台袖、稽古場、楽屋だ。
以前にも、幾度か記したように、
俺は会社員時代(東宝)、最初の所属先が、演劇宣伝部で、
担当の一つが「日劇ミュージックホール」。
そう、ヌードダンサーのお姉さまたちによる華やかなバーレスクである。
有楽町のムーランルージュといった感じかな。
だもんだから、
女性のヌードは、もう四六時中、目にしていた。
ポスター撮影の立会いなんかだと、
もう、朝っぱらの8時くらいから、
十数人まとめてヌードがボヨーンである。
朝専用コーヒー「ワンダ モーニングショット」代わりに、
パイオツと生尻ってとこだ。
もう、しょっちゅうそんなだから、
だんだん、こっちの感覚も麻痺してくるんだよな。
乳やケツが、箸や茶碗くらい日常になってくる。
でも、時にハッとするくらい、
エロいシーンに出くわすのだ。
そう、あの時だ。
取材の打ち合わせか何かの用事で、
俺は、あるダンサーのお姉さまの楽屋を訪れた。
トップから二番目くらいのスターの人である。
で、俺、昼過ぎだったけど業界的に「オハヨーゴザイマス」の声かけて、
楽屋の中に入った。
三畳くらいの小さな部屋。
「あら、オハヨー」と返してくれるお姉さん、
上はシャツ一枚で、パイオツはしっかり見えてる。
でも、お互い、特に動揺しない。ごく自然。
ところが、いきなり、
お姉さん、「あっ、しまった、ツンパ」と慌てた様子で口走り、
右手をすっと伸ばす。
その先には、ロッカーがあって、
扉のノブに、
スパンコールのパンツが引っ掛けられていた。
ピカピカ輝く舞台衣装のパンツ(ツンパ)。
スパンコールのパンツ、略してスパンツ。
スパンツが実に無造作にノブに引っ掛けられている。
お姉さん、それを手にとって、すぐさま外して、
バッグの中に隠した。
恥ずかしいのである。
そう、露出しているパイオツよりも、そっちの方が恥ずかしい。
気持ち、わかったよ、俺。
理屈じゃなくて、本能とかリビドーの次元でさ。
何気にドアノブに引っ掛けられているスパンコールのパンツ
これ、ホーントにすっげぇエロいショットだったですよ、お客さーん。
一瞬、ドキマギして、仕事の話を忘れてしまった。
23歳の俺。
日曜日の昼下がり、
吉祥寺「ユザワヤ」で、
スパンコールのきらめきに、しばしタイムスリップするのだった。
晩飯、マカロニグラタン、キャベツサラダを作ってもらう。
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