本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
朝、訃報のメールに愕然とする。
作家・田中文雄さんが、
12日(日)、逝去された。
心より御冥福をお祈り申し上げます。
あまりに突然のことで、激しいショックを受ける。
こうしてキイボードを叩いている今も、
なおも動揺している。何を書けばよいのか頭の整理がつかない。
田中さんの、人をほっこりとさせる優しい笑顔にもう会えないなんて、
信じられないし、信じたくないのだ。
私にとっては、
ワセダミステリクラブの先輩であり、
東宝映画の先輩であり、
文壇の先輩であった。
東宝では、
私が入社した時には、
入れ違うように、退社されていたが(後、三年間ほど、作品契約のプロデューサーを務められていた)、
それからも、時折、ぷらっと、オフィスに顔を出し、
公開中のおススメの映画なんかを教えてくれた。
例えば、
「不覚にも『野獣刑事』には泣かされたなぁ」
「ハトが飛ぶのがいいんだよ、『マーズ・アタック!』は」
また、とても茶目っ気のある一面も・・・。
会社で勤務中の俺に、電話をかけてきて、
開口一番、
「スパイ大作戦」のあの口調で、
「おはよう、ヘルペス君」
それとか、
「なあ、足をとったイカの中に、チンチン入れたら、キモチいいかな、やっぱ、少しカユイかな?」
いきなり、電話で、下ネタ、振ってこないでくださいよ。
こっち、まだ準備できてないですから(笑)。
俺が喜んでいると、
それから数ヶ月くらい、
田中さんは電話のたびに、開口一番、合言葉を要求してきた。
「イカ」(田中さん)
「チンチン」(俺)
すると、田中さん、小学生のように喜ぶ喜ぶ。
そして、また、映画の話とか、
ホラー作家仲間の飯野文彦さんや友成純一さんの最新情報などを語ってくれるのだった。
それが、また、実に楽しかったこと。
そんな田中さん、また珍妙な電話をかけてきそうで仕方ない。
ホラー作家ですからね。
あの世から、
「おはよう、ヘルペスくん」って。
謹んで御冥福をお祈り申し上げます。
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いつも献本さしあげていたけど、
最後がこれになってしまった。
チャンドラー「長いお別れ」のセリフに、
「さよならを言うのはわずかのあいだ死ぬことだ」
そうです、いずれ、私やクラブの仲間たちもそっちに行きますから、
また、賑やかに語らいましょうよ、田中さん!
晩飯。トビウオの塩焼き。アジたたき。冷奴のワカメのせ。塩揉み春キャベツ。
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