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■ 2月19日(金)・2010
February 19, 2010 10:23 AM


奇蹟
って、あるもんだなあ。


というのは、
フィギュア男子の織田信成。


「ライムライト」に始まる
チャップリン・メドレーで、
道化のコミカルさと躍動感、そしてペーソスを表現。
チャップリンの数々の作品を想起させてくれて、
映画マニアとして、とても嬉しい。


ところが、トラブル発生。
靴の紐が切れて、
演技が一時中断。


こんなことは滅多に起こることではない
と解説者の声もちょいと震え気味。


織田選手は、
靴紐をクルクルッと巻いて、直す。


あああああああああああ、
これって、
チャップリンの最高傑作


「黄金狂時代」


じゃないか!!!


奇しくも、
事故によって、
「黄金狂時代」
の名シーン中の名シーンを取り込んでしまったのだ。
奇蹟、
としか言いようが無い。


予定されていた演技よりも、
凄い事態になっている。
これは四角四面の審査基準なんか、軽く凌駕している。


そして、トラブルの焦燥をはねのけ、演技を再開し、
ラストまで舞い、「モダンタイムス」で締めた。


既成の審査に収まりきれない、
ドキュメントプレイを披露してくれた織田信成選手、
点数も順位も気にしなくていい。
奇蹟の前では、それは矮小な人間の領域。
道化の神様、チャップリンが企み、試し、
それに応えた織田選手を、
祝福しているのだから。


「ライムライト」のラスト、
チャップリンが事故を
ショーの一部と見せかけて、観客を爆笑させるシーンが印象的だ。
道化のスピリットである。


今回の奇蹟はそれに通じている。
これから、
織田信成選手はさらなる成長を遂げるに違いない。


フィギュアとは、
氷上のパントマイム。
チャップリンで正解なのである。


 晩飯。豚肉の薄切り肉の水炊き、仕上げはラーメン。



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