本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
どうにかこうにか、
アルコールが抜けてきたけど、
中学の同窓会の楽しい余韻は
ほんわか残っている。
折角なのでちょいと反芻しよう。
当日、会いたかったけど、
欠席だった一人が、
A川くん。
どうやら、連絡先すら不明らしい。
会場で仲間たちとは、
A川君のメモリーで激しく盛り上がった。
一部のあいだでは、
カルト的人気を誇る存在なのだ。
藤岡弘を二十回くらいコピーにかけた感じの顔で、
小学生の時には、
クラスにひとりだけ中年が混じっているように見えた。
言動もほとんど中年だった。
常に、A川先輩と呼ばれていた。
なぜか、
格闘技を通信講座(道場ではない)で習っていて、
中学の
体育の柔道の時には、
他生徒の技に論評を加える。
その理論たるや、
体育教師より圧倒的に詳しい。
みんな、A川くんの周りに集まり、夢中になって、
彼の解説に耳を傾けたものだった。
けど、
いざ、自分が試合に立つと、あっさり負ける。
しかし、
その敗北の理由も、整然たる理論体系で解説し、
高尚な技の実験をしたことを、納得させるのだった。
また、
ハム(アマチュア無線)にも詳しく、
免許の取得試験に何度が挑戦したが、不合格を重ねる。
後で、
知ったんだけど、全部、○×式で簡単なものらしい。
そこんところを、
A川くんに突っ込んで、からかったら、
マジで怒って、
俺らが、わーっ、って逃げる。
それが面白くて、繰り返しているうちに、
A川くん、物凄く足が速くなってしまい、
とうとう、
リレーの選手に指名されるまでに至った。
何が幸いするか解らないものである。
そして、
A川くんには、
齢の離れた兄貴がいた。
兄貴のベッドの下には大量のアダルト系の雑誌やグッズが隠されていたらしい。
そのおかげで、
A川くんは、
中学一年にして、
十種類以上の避妊方法を知っていた。
ああ、他にも、いろいろあるんだけど、
キリがないよ。
いずれ、さらなる証言を集めて、
当HPの「始末書」
アカバネングラフィティで、
「A川くん追跡スペシャル 24時」
を掲載するとしよう。
晩飯、鶏と野菜のスープ、冷奴、酸い覚めにソフトなメニューをあつらえてもらう。
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