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■ 3月11日(木)・2010
March 11, 2010 9:53 AM


町内の昔からある小さなごく普通の中華店。
老夫婦が営んでいる。


一度も利用したことがなかったけど、
こないだ、気まぐれにふらりと入ってみた。


すると、ラーメンがとても美味しかった。
鶏ガラ出汁と思われるスープと、
シコシコとしたちぢれ麺。
ごく普通のラーメンらしいラーメン。
何だか、ホッとする味わいなのだ。


流行のラーメンのガイド本には載ってないけど、
なるほど、街に根付いた店で、
地元の住人に愛され続けた味なんだなぁ
と感慨深い。


その後、何度か通い、
素朴なラーメンの味わいを楽しんでいた。


でも、中華屋さんなので、
麺類の他にも、
いろいろとメニューがあるんだな。


たまには、違うものを、と、
チャーハンを注文。
すると、
何か、妙な緊張感が漂うのを感じた。


店主がフライパンに油を敷き、
御飯や具を炒め始める。
が、
火力に腕の動きが追いつかない。
もくもくと煙が立ち昇る。


店主は、ゲホゲホと激しく咳き込み、
苦しそうに胸を押さえながら、
フライパンの前から
一時、逃亡。


老いた店主の体力と運動神経では、
チャーハンに対応できないのだった。


何だか死に物狂いで作っている。
ようやく、完成したんだけど、
チャーハンというより、
日曜日にお父さんが作った焼き飯という感じ。


でも、命を削って作ってくれたんだから、
俺、最後まで食ったよ、
苦行のように。


おそらく、他にも、
オーダーしてはいけないメニューがあるのだろう。
だったら、無くせばいいのに、
と思うが、そこはそれ、
長年、店を営んできた老主人のプライドが許さないと推測する。


近隣住人は、
そんな点も察しつつ、気を配って、オーダーしているのだろう。
長年、愛され続ける味はこうして守られる。
まさに、
地元に根ざした店である。


 晩飯。ブードゥ鍋、仕上げはピザ用チーズを入れて、リゾット。
あと、出汁で使ったアサリをガーリック入りの酒蒸しに。



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