本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
多忙につき、
一日遅れの
雛祭り、であった。
雛祭りとは起源を辿れば、
ひとがた流し。
己にこびりついた「穢れ」を
人形になすりつけて、身代わりとさせ、
川に流し、
心身を清める祭祀である。
禊(みそぎ)の一種だ。
故に、
日頃から、マンコだのキチガイだのと暴言を書き連ねる
俺のような穢れ者こそ、
ちゃんと雛祭りで心身を清めなければならないのだ。
寺山修司の映画「田園に死す」では、
雛人形の五段飾りまるごとが
川を下るというスペクタクルシーンが妖美だった。
また、蜷川幸雄の舞台「ハムレット」
1988年バージョンにおいては、
舞台装置の全体を、雛飾りの段に見立て、
ラストでは、
黒い衣装の群集が、
一瞬にして、
白い衣装に化身するというトリッキーな演出を見せた。
かようにして、
賢人や偉人により、
多彩なアプローチで
雛祭りの禊(みそぎ)が表現されてきた。
で、俺はどうするかっていうと、
そりゃ、雛祭りといえば、
ちらし寿司でしょ(←そこかよっ)。
毎年、雛祭りの日には、
ちらし寿司をこしらえるのだ。
午前中のうちに、
近所のスーパーでちゃっちゃっと食材を買い込んでくる。
安いものでいい。
目安として、計1000円くらい。
そして、仕事の休憩時間に、
気分転換を兼ねて
さくさくと調理する。
一回、20分くらい、
それを三回くらい繰り返せば、
寿司種は出来る。
干しシイタケをめんつゆで煮る。
冷凍ボイルエビを軽く茹で、塩をふっておく。
醤油イクラ漬け。そのまま。そして、これだけ、ちと高い、けど四百円程度。
砂糖を入れた溶き卵を、フライパンにマーガリンを敷いて、薄焼きし、細切り。
レンコン薄切りを、軽く茹でた後、コブ締め(酢と砂糖)。
出来合いのアナゴ焼きに軽く酒をふり、ガスコンロでちょっとあぶり、細切り。
三つ葉、テキトーに切る。
ほとんどインチキ、我流のやり方で、
手抜き、簡単、時間節約。
これで充分にいける。
あとは、酢飯に混ぜて、乗せて、飾り立てよう。
はい、完成。
ちょっとした飯の雛壇って感じ。
好きなように切り崩して、豪快に食らう。
禊(みそぎ)なんだから、じゃんじゃん食らう。
たっぷり食らう。
今日、食らって、
明日も食らう。
さあ、身も心もきれいになったぞ。
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