本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]
隣り町の
駅ビル地下の
大きな魚屋さんへ行ったんだよ。
刺身の売り場に
お値打ちのサービス品の
刺身盛り合わせパックが並ぶコーナーがあり、
オイラはそれが
お目当てなんだけど、
どうにも
そこに近付くことが出来ない。
だって、
その真ん前で
小さな男の子(幼稚園児くらい)が激しく泣きじゃくり、
そして
そのお父さんが
男の子を厳しく叱りつけている真っ只中なのである。
つまり、
刺身盛りバックの棚の前に
この親子が敢然と立ちふさがり
ほとんどバリケード状態と化しているというわけ。
仕方なく
しばし様子を窺っていると、
どうやら
男の子が
魚屋さんのオッチャンから何かお菓子をもらったのだが、
「ありがとう」って言わなかったことを
お父さんが激怒し、
「さあ、これから言いに行きなさい」と熱く指導中、
しかし、
この男の子、きっと照れ屋で小心なんだろうね、
怯えた様子でイヤイヤと全身を震わせ
泣き続けるばかり、
それがまた
お父さんに火をつけ、
断固として許さず、意固地にすらなり、
もう何が何でもとスパルタ的指導を加速させ、
すると、男の子の方も
さらに火の付いたように泣き叫び、
しゃくりあげるわ、咳き込むわ(こんな時期に)、
かくして、炎上中の親子は
負のスパイラルにはまったまま、
その場所からまったく動こうとしないのだ。
なあ、おい、
オイラの刺身盛りパック・・・・・・
すると、ようやく、
どこかで買い物を済ませてきた
お母さんが登場!
おお、助けの女神よ、
ここでついに膠着状態の局面は打開される・・・
と思いきや、
お母さんはお父さんから事情を聞くなり、
「この子は引っ込み思案だからさ、まだ無理なのよ」
すると、お父さん
「いや、それじゃしつけにならない」
って口火が切られ、
あれよあれよというまに
こんどは夫婦喧嘩へと急展開し
バリケードがさらに分厚くなり
相変わらず男の子は激しくギャン泣きしてるし
もはや、このエリアは
この一家の自宅リビング状態・・・・・・
ああ、
オイラの刺身盛りパック・・・・・・
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